「ドリームキャッチャー」(続き)

君がいた夏小一時間もすると大きな白い壁に囲まれたインテリアショップに到着した。

趣味と言っていいくらいインテリアショップ巡りが好きな私にとって、新しい店ではどんなものに出会えるだろうか?という期待で一気に気分が高揚する。
壁を大きく切り取ったようにして配置された窓からは、穏やかな海の風景を見ることができ、この風景自体がインテリアの一部と化して、センスの良い空間を演出している。何処から見ていいのか迷うくらいの広さだが、今日は時間がたっぷりある。1つ1つのコーナーをゆっくり見て回ることにした。

今日一番の目的は部屋のカーテンだ。
ここを変えるだけで部屋の印象はガラッと変わる。そのカーテンの色合いやデザインに合わせて、その他のファブリックを揃えるのが私の模様替えのセオリーだ。国内ものから輸入物、それ以外にも要望に応じて取りよせやオーダーメードも可能とあって、初っ端からかなり迷ってしまった。

一旦頭の中を整理しようと、他の売り場を見ていた時のことだ。
いろいろな雑貨を置いてあるコーナーにネイティブアメリカンの雑貨があった。つい そっちの方向へ足が向いてしまった私は、そこに以前から探していたあるモノを発見してしまった。ドリームキャッチャーである。

ドリームキャッチャーとは、アメリカインディアンのオジブワ族に伝わる、輪を基にした手作りの装飾品だ。オジブワ族は伝統的に、小さな輪や涙の形をした枠に巡らせることで縒糸を強くしようとしてドリームキャッチャーを作製する。その結果として出来たのが、ベッドの上に掛けることで、眠っている子供を悪夢から守ってくれる魔除けのお守りとしての「ドリームキャッチャー」だ。

オジブワ族は、ドリームキャッチャーは夢を変える力を持つと信じており、研究家によると、「悪夢は網目に引っかかったまま夜明けと共に消え去り、良い夢だけが網目から羽を伝わって降りてきて眠っている人のもとに入る」とされる。また「良い夢は網目の中央にある穴を通って眠っている人に運ばれてくるが、悪夢は網目に引っかかったまま夜明けと共に消え去る」と。元来の信仰では、悪夢は網の穴を抜けて逃ていき少しも残らない効果があるとされており、ベッドの上や家の中に掛けることで、夢をふるいにかけるフィルターとしての役割をなすとオジブワ族に信じられてきたとのこと。

興味深い歴史を知って、いつか手に入れたいと思っていたが、まさかここで見つけるとは…。
予想外の発見に私は興奮していた。自分の欲しいものに出会えるチャンスはそうあるものではない。この偶然に喜びつつ、私はカーテンそっちのけで食い入るように売り場を見ていた。携帯ストラップのように小さなものから 1m近くある大きなものまで色んな種類があったが、輪の部分が顔の大きさ位あるサイズのものを選んだ。


結局、ドリームキャッチャーを手に入れた事に満足した私は、そのままイタリアンレストランで極上のパスタを堪能したあとインテリアショップを後にした。 もちろん当初の目的は模様替えの為のカーテン購入だったが、ドリームキャッチャーを購入したことで、インテリアもそれに合わせて変えた方が面白いと考え(というかそういうことにした)、また後日改めて訪れることにした。

帰り道、念願のドリームキャッチャーを手に入れた私は、すぐ包装から取り出し車内に飾った。窓から入ってくる夕刻の優しい潮風に揺れているドリームキャッチャーを見ながら、これからはきっと良いことしか起こらないに違いないという期待と、新しいインテリアに思いを巡らせながら海沿いの道を走った。
 (Y.Miura)


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