「パールピアス」(続き)

君がいた夏このアルバムもやはり取っ掛かりは兄からだった。
ステレオが兄の部屋にしかなく、どうしても聴きたかった私は、兄が外出した日にこっそり部屋に入ってレコード棚から引っ張り出し、ブックレットとにらめっこしながら聴いたものだ。

当時はまだレコードと呼ばれる円盤状のメディアの時代で、レコードプレーヤーと呼ばれる機器を使って、レコードのA面・B面(表と裏と言った方が分かり易いか!)をターンテーブルの上でひっくり返しながら聴いていた。アルバムなるとLP盤という約30cm四方のサイズになり、今のCDに比べて大きいことから、ジャケットデザインをひとつの芸術作品と捉える人も多く、アーティストや曲を良く知らなくても、ジャケットデザインを気にいってアルバムを買うという、いわゆる”ジャケ買い”という言葉もあったくらいだ。
(このアルバム自体はシンプルだが、ブックレットのイラストはイラストレーターの安西水丸が描いている)

さて、昔話はこの辺にして、大のお気に入りであるこのアルバム、各曲ごとに私の独断と偏見と勝手な想像にあふれた解説&感想を書きとめておく。

【A面】
1.ようこそ輝く時間へ
イントロからがっしりハートをわしづかみされた大好きな曲。遊園地で過ごす大人の夏休みを描いた作品とのこと。この曲聴いて夜の遊園地が大大大好きになった。

2.真珠のピアス
ファンの実体験から出来た曲らしい。別れが近いと悟った女性が自分の存在を彼の元に印したくて、ベッドの下にピアスをわざと置いておく.....。聴いた当初はこの曲の深いところまで分かるはずもなく、いろいろ経験して大人になった今、気持ちが分かり過ぎて今度は聴くと辛い曲。 

3.ランチタイムが終わる頃
ユーミンが想像する昼休みのOLの生態を歌った曲とのこと。忘れられない男性の事を思いながらランチを過ごしているシーン。。この曲の彼女と同じような気持ちで過ごしたこと多々ありあり。

4.フォーカス
メガネに隠れて臆病だった自分が、愛する男性とめぐり合ったことで一歩踏み出す勇気が持てた。。という歌。「あなただけにめぐり会う為に 今まで私 あんまりモテなかった」この歌詞が初々しくて可愛くて、今聴くとなんかこっぱずかしい。

5.夕涼み
別れた恋人との夏の思い出の歌。この曲もだけど、ユーミンは言葉のセンスがホントに秀逸で、「みがいたルーフを金の雲が um…流れた」「笑った瞳に細い月が um…映った」とか、荒井由実時代に遡ると「ソーダ水の中を 貨物船が通る」とか、もうどうやったらこんな歌詞が書けるのか嫉妬。

【B面】
1.私のロンサム・タウン
この歌詞に出てくる「ナホトカ」の意味が最初分からなくて、あとでロシアの商港都市名と知った。
うんちくは置いといて、ライブツアー途中のオフの情景を歌っているとわかり、聴いてなるほど!となった歌。これもツアー先の風景やコンサートスタッフの様子など情景が浮かんでくる大好きな歌。ここにも「少女たちは雨に打たれるコスモスのように、手を振ってる」とファンの様子を歌った素敵な歌詞が。

2.DANG DANG
何度この曲と自分の恋と当てはめて泣いたことか…って今考えるとちょっとイタイ(笑)。基本的に別れるとか別れたとかって言う内容の歌詞にすごく共感するのが多かった気がする。。。曲を聴きながらそういう悲劇のヒロインな自分に酔っていたのか。。。どっちにしてもイタイのに間違いない。(自分はイタくても、これはすごくいい曲マジで)

3.昔の彼に会うのなら
昔の彼とのデートを計画するけど、やっぱり会わずに思い出の中にとどめた方がいいっていう歌。初恋の彼には合わない方がいいよねっていうのにちょっと近いかも。後は、スキー場で会った彼と街で会わない方がいいよねとか(これは違うな...)

4.消息
駅のホームで偶然別れた彼を見つけたのに声をかけられなくて電車が発車する。。。という切ない思いを歌った歌。「愛して愛しているうちに 私はあなたのグレイの汚染(しみ)になる」 電車が発車してあなたからどんどん遠ざかりながら、私はだんだんグレイのしみのような(消えていく)存在になっていく...
なんでこんな歌詞が書けるんだろう。 

5.忘れないでね
夜中に電話を3回鳴らして切ったら私。忘れないで。明日会ってね。。。。好きになっちゃいけない人を好きになってしまったLOVE AFFAIRな歌の世界。ファンタジックな感じのメロディにのせて、敢えて心憂いな気持ちを感じさせないようにオブラートに包んだような歌。

ということでざっくり10曲について書いてみた。
全体を通して言えるのは、とにかく曲を聴いているとそのストーリーが浮かび、その歌の世界の主人公と同化して、(体験したことがなくても)体験した気分になれるところが、ユーミンの曲のすごさなのか。
これが自分に経験あることになるとその効果は絶大。

ユーミンは「自分の気持ちを代弁してくれる」と。

ユーミンは当時の女性たちにとって、恋愛番長だった。だれもがユーミンの紡ぎ出すキラキラした世界に浸り、ユーミンが発信する情報を我先にと掴みにいっていた気がする。
時代が変わり、情報が氾濫し、レコードからCD、そしてインターネットからダウンロードと、音楽の聴き方も変わってきた今、ユーミンから得る情報は少なくなってきたかもしれない。

でもこのアルバムを聴いていると、キラキラした時代に戻れる気がするのだ。(Y.Miura)


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